後遺障害事故の損害賠償額算定(計算)方法

2018年9月9日

後遺障害とは、負傷により身体機能に障害が残り、治療してもこれ以上回復が見込めない状態のことを指します。

後遺障害の認定について

交通事故による傷害の治療を続けても事故前の状態に回復することなく症状が固定した場合は、傷害による損害(積極損害、消極損害、慰謝料)とは別に後遺障害についての損害賠償を請求することができます。

この後遺障害における損害賠償の算定は、医師から症状固定(注1)と診断された日から始まり、特に障害を被むって低下した労働力分の逸失利益と肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料は損害賠償の大きな割合を占めます。

注1:最新治療を継続しても症状の回復や改善が見込めないと医師が判断した状態

これら損害を請求するためには「後遺障害診断書」を担当医に書いてもらう必要があり、その診断書を「自動車損害賠償責任保険支払請求書兼支払指図書」(注2)とともに自賠責保険会社に送付すると、自賠責保険会社が専門の審査機関へ書類を送付、審査を行い、その審査結果に基づいて保険会社で賠償額が決定されて賠償金が支払われます。

注2:書類は各種保険会社や代理店に置いてあり郵送で取り寄せることもできます

自賠責保険の請求手続きの流れ>>

後遺障害認定のポイント
◇診断書は担当医に作成してもらう
◇後遺障害の診断料および診断書作成費用は損害として保険会社に請求可能(ただし認定に対する不服申し立て時の再度の診断および文書作成料は被害者負担)
◇任意保険における障害等級は自賠責保険での等級に準ずる場合が多い
◇後遺障害の認定には2~3カ月ほどかかる

後遺障害の認定が不服なら異議申し立てを

後遺障害の認定等級が思ったより低かったり、非該当とされてしまった場合など、障害の認定等級が納得できない場合は、レントゲン写真など障害の程度を証明する資料を揃えて「後遺障害認定等級に対する異議申立書」を自賠責保険会社に提出して異議申し立てを行います。

「後遺障害認定等級に対する異議申立書」各種保険会社や代理店で入手できます。

後遺障害における積極損害の内容について

症状を抑えるための治療や生活にかかる実費を請求することができます。

費目 内容 備考
将来の治療関係費 将来確実に実施する予定の手術費や治療費など、医師に必要性が認められている場合のみ実費の請求が可能。 原則は認められない
付添看護費 将来にわたって付添いが必要と医師に認められた場合に請求が可能。
【プロに依頼】実費全額
【近親者の付添い】1日5,000円~8,000円
弁護士会基準
家屋等改造費 家の出入り口や風呂場、トイレ、自動車などを改造しなければ日常生活に重大な支障をきたす場合にかかる実費を請求可能。 自賠責保険の限度額は120万円
義肢等の装具費用 後遺障害の程度によって、
・義肢
・車いす
・盲導犬
・補聴器
・入れ歯
・義眼
などの器具を購入もしくはレンタルする費用が請求可能。
将来の交換や買い替えの費用も請求可能

一括で支払われる保険金からは中間利息が控除されます

装具の買い替え費用や逸失利益を算定するときは、将来受け取るはずの金銭を一時的に現時点で受け取るので、その金銭を将来に渡って運用したと仮定した場合に得られる中間利息分のお金は控除されます。

中間利息の控除の計算方法には、単利計算の新ホフマン式と複利計算のライプニッツ式があります。

中間利息控除のための利息計算方法
◇新ホフマン式(単利)・・・利息は当初の元金のみにかかる
◇ライプニッツ式(複利)・・・元金に利息が加算され、これを新たな元金としてさらに利息が加算される

単利計算の新ホフマン式よりも複利のライプニッツ式のほうが利息が大きくなり、よって支払い保険金から控除される中間利息額も大きくなります。

中間利息の控除の計算式については、平成11年に東京地裁、名古屋地裁、大阪地裁が、

「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」

を提出し、中間利息をライプニッツ式に、控除利率を5%としました。
当サイトではライプニッツ式を基本としています。

収入の算出について

保険金支払い額算定のための逸失利益(事故によって働けなくなったことによる減収分)算出において、自分の年収がいくらあったのかを証明する必要があり、職種によって収入算出の基準が異なってきます。

自賠責保険基準による逸失利益

自賠責保険の支払い基準では、厚生労働省作成の賃金センサスの全年齢平均給与額表が基準となり、下記の算定方法が取られています。

逸失利益算定方法

対象 内容
有識者 事故前1年間の収入額と、後遺障害確定時の年齢に対応する年齢別平均給与額の、年相当額のいずれか高い方を収入額とする。
ただし、次の者についてはそれぞれに掲げる額を収入額とする。
1)事故前1年間の収入額を立証することができる35歳未満の者
・事故1年間の収入額、全年齢平均給与額の年相当額および年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額
2)事故前1年間の収入額を立証することができない者
・35歳未満…全年齢平均給与額の年相当額もしくは年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い方
・35歳以上…年齢別平均給与額の年相当額
幼児・学生・主婦 全年齢平均給与額の年相当額とする。ただし、58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は、年齢別平均給与額の年相当額
その他働く意思と能力を有する者 年齢別平均給与額の年相当額とする。ただし、全年齢平均給与額の年相当額が上限

職種による収入算出のポイント

自賠責保険の基準は一応の年収算出の基準になりますが、立証方法は職種によって異なります。また無職の場合でも、主婦や学生などいろいろな状況が考えられるので、職種ごとに年収を確定させるための基準があります。

収入を確定させるための職種ごとの基準
サラリーマンなどの給与所得者
⇒給与明細や源泉徴収票が基準となります。本給に加えて手当や賞与も含まれます。
自営業者・自由業者
⇒納税証明書が基準となります。収入が納税証明書と異なる場合は領収書や帳簿などで証明する必要があります。
主婦
⇒厚生労働省が毎年発表している賃金センサスの女子労働者の全年齢平均賃金が基準となります。パートタイマーや内職をしている兼業主婦は、実収入と賃金センサスによる女子労働者全体の全年齢平均賃金額のいずれか高い方が基準となります。
幼児・未就学の学生、失業者
賃金センサスによる男女別全年齢平均賃金額が基準となります。18歳から67歳までが労働能力喪失期間として認められています。

労働能力について

労働能力喪失期間

事故による労働能力の喪失が認められる期間は、原則18歳から67歳までとされていて、症状固定と診断された日から67歳までの期間によって逸失利益が算定されます。

ただし、障害の内容と部位、年齢などによっては労働能力喪失期間を引き下げて対応されることもあります。

また、症状固定から67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる高齢者の場合は、原則として症状固定年齢から平均余命までの2分の1の期間が採用されます。

労働能力喪失表

労働能力喪失率とは、後遺障害で将来働けなくなり収入の減少があると想定される比率のことを指します。

交通事故で寝たきりの状態になった場合は労働能力は100%喪失と言えますが、例えばむち打ちや、関節の可動域制限などの場合は具体的にどの程度労働能力が喪失するかは明確に判断できません。

そこで、労働省の出している労働能力喪失表というのが一つの基準とされています。

この表を参考にして、被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位・程度、事故前後の稼働状況、生活状況などを総合的に判断したうえで、労働能力喪失率が決められます。

後遺障害の逸失利益の計算式

年収 × 労働能力喪失率 × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

逸失利益の計算例
年収600万円、40歳の会社員が交通事故によって後遺障害が残り、第9級10号に認定された場合
◇労働能力喪失率は35%(別表より)
◇40歳に対応するライプニッツ係数は14.643(別表より)
計算式:

600万円×0.35×14.643=3,075万0,300円

上記の例だと3,075万300円が逸失利益になりますが、9級の自賠責保険金額は別表の通り上限616万円なので、残額の2,459万300円は加害者の任意保険か加害者自身が自己負担することになります。

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