傷害事故の損害賠償額算定(計算)方法

2018年9月9日

後遺障害が残らない障害事故では、加害者に対して治療関係費や通院交通費、休業損害、慰謝料などを請求できます。請求の際は領収書や請求書が必ず必要になるので、忘れずに一箇所にまとめて保存しておきましょう。

傷害事故における積極損害の内容について

傷害事故の積極損害は治療関係費や通院のための交通費など、すでに支払った実費はもちろん医師が必要と認めた義肢や義眼、車いすなどの費用も請求することができます。

請求できる費目例は、損害賠償請求できる請求費目一覧>> を参照ください。

治療関係費

事故によって受けたケガの治療費のうち、必要性があり相当と認められるものは実費として全額を加害者に請求することができます。

  • 診察費用
  • 検査費用
  • 入院費用
  • 投薬費用
  • 手術費用
  • 処置費用
  • 鍼灸、マッサージ費用
  • 温泉療養費用

鍼灸、マッサージ費用は医師が治療に必要であると認め、かつ、事前に保険会社の承認を得た場合に請求が可能となります。

また温泉療養費用は、医師が療養上の必要性を積極的に指示し、医師の指導のもと医療機関の付属診療所などで行われた場合のみ請求可能な費用として認められます。

ここに注意!
◇請求には請求書や領収書が必須です
◇自由診療で必要以上の高額治療が過剰診断と認定され請求対象外になることがあります
◇特別室料や差額ベッド料は、搬送されたときに普通病室がなかったり医師からやむを得ない理由で指示されたなど、特別な場合を除いて請求は認められません

付添看護費

入院中の付添看護費は、年齢やケガの程度によって医師が必要と判断した場合に請求することができます。

また被害者が小学生以下の場合は無条件で付添看護費が認められます。

付添看護を職業としているプロであれば実費全額が認められ、近親者が付き添う場合は自賠責保険基準で4,100円/1日、弁護士会基準で5,500円~7,000円/1日が支払われます。

自賠責保険基準と弁護士会基準とは>>

通院付添看護費

入院ではなく通院でも医師が付き添いが必要だと判断すれば、費用の請求が認められます。
自賠責保険基準では、歩行困難者・幼児の場合に2,050円/1日、弁護士会基準では、幼児・老人・身体障害者などの場合に3,000円~4,000円/1日が支払われます。

通院交通費

入院・通院にかかる交通費に加えて、家族の付添者の通院交通費や看護者の通院交通費も請求することができますが、多くの場合は付添看護費に交通費が含まれています。

ここに注意!
◇お見舞いの交通費は原則認められません
◇電車やバスを利用した際は通院日と運賃をメモしておきましょう
◇タクシーや自家用車を利用した際は運賃やガソリン代の領収書を保管しておきましょう

入院雑費

生活消耗品や新聞などの慰安品目が必要経費として認められており、金額は日額単位で定額化されているので領収書は不要です。

費目 品目例
日用雑貨品 寝具、パジャマ、洗面具、ティッシュ、食器など
通信費 電話、郵便代など
栄養補助費 牛乳、お茶、お菓子など
文化・娯楽費 新聞、雑誌、テレビ賃借料など

義肢などの装具費用

医師が身体の機能を補完するために必要と認めた義肢、義眼、メガネ(コンタクトレンズ含む)、補聴器、車いす、松葉杖などの費用は、障害事故による損害として請求することができます。

ただし自賠責保険基準では、メガネについては費用上限が5万円とされています。

その他費用

診断書や診療報酬明細書(レセプト)などの発行費用を請求することができます。

傷害事故における休業損害の内容について

交通事故によるケガが原因で仕事を休まなければ得られたはずの賃金や減収分を、休業損害として加害者に請求することができます。損害額の算出方法には、

◇自賠責保険基準
◇任意保険基準
◇弁護士会基準

の3種類があります。損害賠償額の算定基準について>>

自賠責保険基準
原則1日につき5,700円が支払われますが、証拠資料などによって損害額がこの金額を超えることが証明された場合は19,000円を上限に下記計算式によって実費が支払われます。


◇給与所得者…過去3カ月の1日あたりの平均給与額が基礎になります。
事故前3カ月の収入÷90日×認定休業日数


◇パート・アルバイト・日雇い労働者
日給×事故前3カ月間の就労日数÷90日×認定休業日数


◇事業所得者…事故前年の所得税確定申告所得を基準に1日あたりの平均収入を算出
●農業・漁業従事者およびその家族の場合
(過去1年間の収入額ー必要経費)×寄与率÷365日×認定休業日数
●自営業者の場合
(過去1年間の収入額ー必要経費)÷365日×認定休業日数


◇家事従事者…家事ができなくなった場合は収入の減少とみなし、5,700円/1日が限度額とされています。

任意保険基準
保険会社が支払う任意保険基準は自賠責保険基準より若干高い金額が設定される場合が多くみられます。


◇仕事をしている人…現実の収入減少額とするが、1日あたりの収入が5,700円を下回る場合や、その額の立証が困難な場合は5,700円/1日が支払われます。
対象日数は実休業日数とし、傷害の態様や実治療日数などを勘案して治療期間の範囲内で認定されます。


◇家事従事者…家事に従事できなかった日数に対して5,700円/1日が支払われます。ただし、家庭内の地位や傷害の態様、地域差などを考慮してこれを超える金額が認定される場合もあります。


◇仕事をしていない人…仕事をしていない人の休業損害は認められません。

弁護士会基準
判例をもとにした損害額が算出され、3つの基準の中では最も高い額が採用されます。


◇仕事をしている人
●給与所得者…事故前の収入を基礎としてケガにより休業した日数分の収入が損害として認められます。
(事故前3カ月の収入÷90日)×休業日数


◇家事従事者…賃金センサスをもとにケガのため家事労働に従事できなかった認められ、パートタイマーや内職を行っている兼業主婦については現実の収入額と賃金センサスのいずれか高い方を基準として被害額を算出します。


◇仕事をしていない人
●失業者…労働能力および労働意欲がある場合は、前職の収入や賃金センサスによる算出額が認定される場合が多い。
●学生…卒業後就職が内定していた場合は、就職すれば得られたはずの給与額と賃金センサスのいずれか高い方が採用されます。

賃金センサスとは?
労働者の賃金額の指標となっている統計情報で、厚生労働省が毎年発表しています。

傷害事故における慰謝料の内容について

事故によって被害者が受けた精神的・肉体的苦痛に対して賠償金を請求することができます。傷害事故における慰謝料は治療期間や入院・通院日数などによって定額化されており、休業損害と同じく自賠責保険、任意保険、弁護士会の3つの支払い基準が設定されています。損害賠償額の算定基準について>>

自賠責保険基準
◇支払額…1日あたり4,200円が支払われます。また妊婦が死産もしくは流産し、事故との因果関係が認められれば別途慰謝料が支払われます。


◇対象日数…おおむね実治療日数を2倍した数と治療期間の日数を比較し、少ない方が採用されます。
実治療日数とは実際に治療を行った日数を指し、例えば病院に5回通院した場合は5日と算定されます。
これに対し治療期間とはケガの治療開始から終了までの期間を指し、通院していない日数も含みます。


◇治療開始日
●事故後7日以内に治療開始した場合…事故日が起算日
●事故後8日以降に治療開始した場合…治療開始日の7日前が起算日


◇転院などで治療が中断した場合
●治療の中断期間が14日以内の場合は中断期間中の日数を治療期間に含める
●治療の中断期間が15日以上の場合は当初の治療期間と再治療期間に分離して当初の治療期間に7日を加算する
●同じ病院での治療が中断された場合は対象が同一傷病であれば通算して治療期間が算出される


◇治療終了日
●治癒日(治療したとみなされる日)が治療終了日から7日以内の場合治療日が治療終了日となる
●治療日が治療終了日から8日以降の場合治療終了日に7日を加算する
●治療終了日が「治癒見込」、「中止」、「転医」、「継続」となっている場合は治療終了日に7日を加算する

任意保険基準
規制緩和による保険の自由化により平成9年以前の統一基準の遵守義務はなくなり、現在では保険会社各社が個別に支払基準を設定しています。


入院期間が2カ月で通院期間が3カ月の場合の支払い例

◇軽度のケガ(打撲、捻挫など)⇒80万円


◇中度のケガ(前腕骨折、脱臼など)⇒88万円(軽度のケガの10%増し)


◇重度のケガ(頭蓋骨骨折、脳挫傷など)⇒100万円(軽度のケガの25%増し)

弁護士会基準
裁判所の判例をもとに作成された弁護士会基準は、自賠責保険、任意保険の基準と比較して高い額が設定されています。


加害者側と賠償額で揉めた場合は交通事故の相談に乗ってくれる機関に相談してみましょう。
交通事故の相談先 ~交通事故紛争処理機関を活用しよう~>>

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